“ 侮辱を笑みで迎合するな”

何か失礼な愚行を晒された時、「まあいいや」と生ぬるい愛想笑いで、その場を誤魔化す癖。
あれこそが我々日本人に蝕まれた、最も醜悪な「安易な平和主義」正体だ。
君がその場凌ぎで飲み込んだ不快感は、相手の無知な領域において、「これほど踏み込んでも怒らぬ奴だ」という、都合の良いデータとして処理される。
己の生における境界線とは、他者に委ねるものではなく、自らの言葉によって崚烈に、引き直さねばならぬ。
相手の目から決して視線を逸らさず、静謐な声で告げてほしい。
「その言い方は不愉快です」
「それ以上はもはや冗談にはならない」と
声を荒らげる必要などどこにもない。
怒号を撒き散らすのは、未熟な自我が暴走した醜態に過ぎない。
水のように冷たく静かに、自らの尊厳を刻み込むのだ。
一度でもこの矜持に満ちた拒絶を貫けば、奴らは二度と君の領域を侵すことはできなくなるだろう。

三島由紀夫