ただ、それだけでは大ヒットの領域に踏み込むことはできない。ここで、見た人の心に深く突き刺さる要素が大切になってくる。「泣ける」という表層的な反応が映画のトータル性の中、いかに見る人の気持ちを深層の領域で鷲掴みできるか。

「365日」なら人を思う気持ちの深さ、尊さが、それを切実に歌い上げる主題歌とともに、観客の心を深くえぐってくる。「ファーストキス」なら、独特の会話劇と予想を超えた話の展開が、見る者の気持ちをざわつかせる。

「涙、泣ける」映画が多くなるのは、企画の怠慢だと思う。押しつけがましいと感じられるようになってしまっては、逆効果にもなろう。今がそのギリギリの段階ではないか。

「涙、泣ける」映画が悪いのではない。このジャンルが興行的に安定しているからといって、安易に多作化されるのがいちばん困る。だから揶揄される。先の2本の内容、成果からは、学ぶことが多いと思っている。