VIII.ま と め
 従来の高温岩体発電方式には2つの致命的ネックがあった。
1 つは天然断裂系が卓越する地殻条件下では注入水の回収率が 50%程度,
あるいはそれ以下に留まり,膨大な注入水補充がつねに必要となる点である。
いま 1 つは地殻への水の注入が間隙水圧を上昇させ,誘発地震を引き起こす点である。

本報では岩手県葛根田地熱地域など,すでに確認されている 500℃前後の延性帯に水を注入し,
延性帯中に孤立人工断裂系を造成することによって,これら 2 つの問題を一挙に解決する
東日本発の延性帯涵養地熱系発電方式を提案した。
この発電方式はやや深い掘削深度を必要とするものの,亀裂を人工的に造成するため,亀裂を
外すという従来の地熱開発にみられた掘削的中リスクが解消される。
また,この発電方式は天然の熱水対流系が存在し得ない延性領域を利用するため,
約 28,000 個もの泉源からなるわが国の温泉文化と抵触しない,究極の温泉共生型地熱開発を可能にする。
この発電方式は採算掘削深度に依存するものの,従来型熱水系資源量よりはるかに広範な新しい
熱伝導型地熱資源の開拓を約束する。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/122/2/122_122.343/_pdf