「自前の研究力みがく」武田薬品R&Dトップのプランプ氏 (2017/7/28 16:20日本経済新聞 電子版)

武田薬品工業が研究開発(R&D)の力の引き上げに躍起になっている。2016年から研究所の改廃を含む大規模な再編に着手。
競争力の中核をなす新薬をうみだす力をよみがえらせようと、矢継ぎ早に新しい取り組みに取り組んでいる。
武田の研究開発部門のトップ、アンドリュー・プランプ取締役に狙いを聞いた。

――昨年から、研究開発体制の刷新に着手しました。

「クリストフ・ウェバー社長と私で、がん、中枢神経、消化器という3つの治療領域に集中し、その治療のために必要な方法はなんでも採用する、という方針に変えた。
その中で重視したのは大学やベンチャー企業(VB)など外部との研究協力だ。自前ですべての技術を抱えるのは無理だし、新しい技術は花開かないケースが多いからだ」

――研究開発費はどのくらいが適正ですか。

「業界の標準は研究開発費の売上高に対する割合が15%。武田はその上をいっている。新薬を市場に出すためのコストは10年前の2.5倍の20億ドル(2200億円)に上昇しているとのデータもある。
外部との協力によって、失敗のコストを下げる必要がある。企業規模が巨大になりすぎると素早く動けない。業界のトレンドは小さく、敏しょう性を高めることになりつつある」

――武田はグローバルな製薬業界で売上高が20位前後。生き残りは可能ですか。

「生き残るだけが目標ではなく、売上高を継続的に成長させたいと考えている。我々は十分に巨大で戦略は正しい。多発性骨髄腫治療薬の『ニンラーロ』や潰瘍性大腸炎の
治療薬である『エンティビオ』など新しい製品が育ちつつある。成長は可能だ。ただ、第3相の臨床試験に入った新薬候補が枯渇しており、そこは課題だ。」

――自前の研究開発力を高めるにはどうすればよいのでしょうか。

「私たちは何でも自前で持つことはしない。ただ、注力すると決めた治療領域ではベストである必要がある。外部と協力する場合でも我々自身がその分野で偉大でなければ相手として選んでもらえない」

――昨年、研究者の評価制度を変えました。

「研究は失敗が重要で、できれば早期に失敗した方がよい。研究を前に進めることが目的になってしまうとそうはならない。以前は、新薬候補物質をいくつみつけたとか、
試験をいくつやったとか、で評価していたが、私は数字のゲームから離れることを決めた。開発中止を判断した場合も、継続と同じように評価するようにした」

――人材の育成方法は。

「核になるのは医師の資格を持った研究者だ。研究と臨床をつなぐ人材はやはり少ない。今年、彼らを対象にした2年間の特別な研修プログラムを始める考えだ。
全世界で100人超の医師を研究者として抱えており、様々な部門を回ったり、座学でチームや部門をまとめる管理手法や創薬について学んだりしてもらう。研究開発をリードできる人材になってほしい」

「もう1つは、湘南などにいる日本の研究者を中心に米国・ボストンに異動して、米国の研究機関と共同研究してもらうなど、活躍の道を探る考えだ」

――ご自身は今のポジションをどのくらい続けるおつもりですか。

「私の上司がそれを決めるが、最初の取締役会で10年やるつもりとは言った。ビジネスは中期の視点が重要で、成功を見届けたいと考えている。2〜3年では短すぎる。長期的な仕組みをつくることが私の目標だ」

(聞き手は戸田健太郎)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HR0_Y7A720C1000000/