iPS由来心筋シート、5年以内に製品化へ 第一三共と大阪大ベンチャーが共同開発

第一三共と大阪大発ベンチャー企業「クオリプス」が共同開発するiPS細胞を使った心筋シートについて、大阪大大学院医学系研究科の澤芳樹教授は5日、
「可能であれば臨床研究を来年行い、治験を経て、保険収載されるのに5年程度を目指している」と述べ、iPS細胞由来としては世界初の心不全治療の実用化に意欲を示した。
両社は同日、東京都内で開いた共同記者会見で、共同開発の概要を明らかにした。

製品化を目指すのは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞をシート状に加工した他家細胞治療製品。澤教授のグループが京都大iPS研究所の協力を得てシートの作製技術を確立した。
非臨床試験で臨床応用の芽が出てきたことから、澤氏らが商業化に向け今年3月にクオリプスを設立。8月には第一三共がクオリプスに出資し、シートの全世界での販売を第一三共が選択できる権利を持つ契約を両社で結んだ。
共同開発で最初に狙う適応症は、薬やデバイスの治療による効果が期待できず心臓移植の一歩手前の重症虚血性心疾患の患者。
クオリプスのチーフ・サイエンティフィック・アドバイザーを務める澤氏は「対象患者は数千人で、回復力のある患者も含めれば数万人に広がる」と述べ、順調に適応拡大に向かえば対象患者は数万人に達するとした。

世界初の再生医療等製品の骨格筋芽細胞由来の心筋シートとしては、テルモが2016年5月に「ハートシート」を発売している。
澤氏は骨格筋芽細胞由来とiPS細胞由来の違いについて、iPS細胞由来は心筋細胞のため移植される側の心筋とコンセントをつなぐように結合し同期拍動することが非臨床試験で確認されたと説明。
人でも心筋自身の直接の効果が期待できるかどうか、臨床研究で検証していくとした。
ハートシートは、患者自身の足の筋肉の細胞を取り出し培養・加工する「自家」細胞製品なのに対し、iPS細胞由来は患者以外の細胞を培養・加工する「他家」細胞製品のため、大量生産が可能とも指摘。
澤氏は「世界中で治療を望んでいる患者が毎年100万人おり、世界にも提供していきたい」と述べ、国際展開も視野に入っているとした。

●「本気度は100%」第一三共の中山会長

共同開発する第一三共の中山讓治会長兼CEOは「われわれの本気度は100%、資金や人材、企業ノウハウ、これまで細胞治療研究で培ってきた技術などを投入し、全面的に支援していく」と述べた。
第一三共は、クオリプスと大阪大が来年早々に同大に開設する共同研究講座を支援し、臨床研究と医師主導治験に企業ノウハウを提供していく方針だ。
中山会長兼CEOは第一三共の細胞治療の開発としては、英国のベンチャー企業から導入した虚血性心不全に対する他家細胞治療薬「ハートセル」、米カイト・ファーマ社から導入したCAR-T療法に続き、3つ目になるとした。
その上で「中期経営計画に掲げた標準的治療を超える先進的新薬の創出に向け共同開発に取り組んでいく」と述べた。

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