―具体的な支援体制は。

実際にベンチャーを立ち上げるとなると、研究者が他愛もないことで悩んでしまうことも多い。その解決に向けて武田薬品にはさまざまなノウハウが詰まっているので、それを提供していくことになる。

例えば、特許の申請一つを取ってみても、大学の中にいれば特許を出す部門があったが、自分が独立したら自分で手続きをしなければならなくなる。武田薬品との共同研究であれば、共同で特許を申請することもできるが、そうした縛りをかけるつもりはない。
自分で特許を申請したいが手続きが分からないという人もいるだろう。武田薬品には特許申請専門の部門があるので、その専門家たちによる特許相談会のようなものを週に1回湘南研究所で行うようなことも考えられる。

あるいは会社を立ち上げるとなると、財務諸表の作り方や借入金の確保の仕方、人件費の支払い方など、研究以外でやらなければいけないこともある。こうした部分を武田薬品の人事部でサポートしていく体制にしたい。
具体的にどのような体制とするか、さらに社内で詰めていかなければならないと思っている。

―資金面での支援体制も必要になる。

ファンドをしっかり設立して独立的に各プレーヤーに投資をすることが必要だと思っている。それに当たっても武田薬品が囲い込むつもりはない。
そのため、ベンチャーキャピタルや会社群で投資をしてもよいというところがあれば、一緒に大きなファンドをしっかりつくっていきたいと考えており、現在話を進めている。

―研究開発体制の見直しによって多くの子会社などが設立され、湘南研究所に入っている。これらの役割は。

武田薬品は研究開発の重点疾患領域を、オンコロジー、消化器系、中枢神経系などに絞ってきた。それは、イノベーションのハードルが上がっており、サイエンスのレベルを深く掘り下げなければならないためだ。
しかし、もともと総合医薬品メーカーを標榜し、多くの疾病領域の研究を進めてきた。湘南研究所では、重点疾患以外の領域でも研究ができる状態になっている。

例えば、重点領域から外れた循環器・糖尿病・代謝性疾患領域を引き継いで外部資金も入れてカーブアウトしたスコヒアファーマも、湘南研究所の傘の下で頑張ることになる。彼らのモチベーションは非常に高い。
創薬研究部門の一部を切り出し、創薬研究支援のために子会社としてアクセリードドラッグディスカバリーパートナーズも立ち上げた。製薬企業やベンチャーにさまざまなサービスを提供していくが、武田薬品自体にとっても彼らのサービスは絶対に必要だ。

このほか、武田薬品の研究者の起業を支援する「アントレプレナーシップ ベンチャー プログラム」の下で、いくつかのベンチャー企業が湘南研究所内に立ち上がってくることになる。
武田薬品の社員は真面目で優秀な社員。この人たちが活躍できることは非常に重要で、武田薬品の中か外かという線を引くのではなく、パークというコンセプトの中でサポートを受けながら活躍していくことになる。

パーク構想の実現にはいずれの活躍も不可欠であり、必要とされることはモチベーションを高めることにつながる。

―湘南研究所のがん領域の研究者の米ボストンへの異動も課題となっている。どの程度進んだのか。

100人余りがすでにボストンに渡っている。日本の研究者にとっても米東海岸のノーベル賞を取るような研究者が周囲にたくさんいるような環境の良さを実感していると思う。このような環境を湘南でも実現したい。
ヘルスケアのイノベーションで米国が先行しているのは明らか。日本でも創薬エコシステムを構築することによって、日米が最先端の技術で競い合うことになれば一番良い形になると思う。(聞き手・岩崎 知行)

https://nk.jiho.jp/article/127621