――高層ビルでは万一の災害対策も気になるポイントです。安全・安心のための設計という観点でも新ビルの特徴を教えてください。このビルは「中間層免震構造」だと聞いていますが、どういう利点があるんですか?

建物の1階床より上の構造の中間に免震層を設ける構造が「中間層免震」です。このビルでは2階と3階の間に免震装置が設置されています。
これにより、激しく短い周期の地震の揺れを緩やかな揺れに変えて、建物及び建物内部の人、什器や家具の転倒を地震の揺れから守ることができます。
もちろん、免震層より下の階に関しても通常の建物より揺れを小さくできます。近年は中間層免震をはじめとした免震構造を採用するビルが増えています。

――もしものときでもダメージを小さく。そして電気室にもBCP(事業継続計画)観点を踏まえた工夫をいただいたそうですね!

日本の場合、こういった災害はいつか来るものという前提で、長期的な視野で考えなくてはなりません。電気室は3階と24階に設置しました。
東京電力から送られる電気は3階に入って、3階と24階の電気室に配られます。3階の電気室から低中層部に、24階の電気室から高層部に電気を送る構造にしています。
この地域のハザードマップによると、200年に1回程度、荒川堤防の決壊で地上50cmまで水が上がることが想定されています。
なので、電気室が水没しないように3階以上に上げ、ビルの出入り口には防潮板を付けるなど1階部分はビルに水が入らない構造にしています。

――有事の際には外に逃げるのではなく、ビルの中にいるほうが安全そうですね。

そうですね。ビルの中には安全に滞在できる工夫を凝らしています。例えば自家発電。最新のビルでも一般的に72時間程度ですが、新ビルでは7日間稼働するように設計しています。
それを可能にする量のオイルや食糧を備蓄するというのは、タケダさんの安全・安心はもちろんのこと、BCP対策に対する意識の高さの表れではないでしょうか。
さらに、社屋の一部を帰宅困難者が滞在できるスペースとして提供できるなど、地域社会の安全・安心にも貢献できることを計画に織り込んだ設計にしています。
安全・安心への配慮はもちろんですが、環境負荷低減についても工夫を重ねています。
窓際から約5Mの部分は日射や外部温度の影響を受けやすいので、その熱負荷を制御する空調を通常の空調とは別に設けています。これによりニーズに合わせて、きめ細かい室内温度コントロールを実現します。
また、地下のピットに水を溜めて、そこから確保する熱を蓄熱して空調の熱源に使うなど、ビルを動かす基幹システムもエコロジカルかつ合理的に設計して、ランニングコストの低減をしています。

――見えないところにもそんな工夫があるんですね!ところで、日本設計さんは日本橋の街づくりから手掛けられているそうですね。

行政と三井不動産さんと日本設計が協力して地域の景観ガイドラインやルールを制定し、苦労して造ってきた街なので、当社の思い入れもひとしおです。
「コレド室町1、2、3」、「福徳の森」、「福徳神社」、日本設計の設計ではないですが「YUITO」などがあるこの「スーパーブロック(大街区)」の、ラスト・ピースがタケダさんの新ビルだといえます。
このビルの竣工によって、日本橋の次代を担うスーパーブロックのパズルが完成するといってよいでしょう。ここで働く皆さんにも、ここを訪れる方や周辺地域の方々にも、新ビルの竣工を楽しみにしていただきたいと思っています!