◎経営側にない悲観論覆す有力な反論

その結果、のれんの減損損失で経営危機に陥った東芝の姿が、武田と二重写しになりつつある。前述の「考える会」は、海外企業の買収自体に反対しているのではない。
シャイアー買収に伴う巨大なリスク発生への対処について武田経営陣の説明が抽象的で、曖昧な点を問題にしている。今後も臨時株主総会前の半年間、シャイアー買収の可否を巡る論議は続くだろうが、決してためにする論議とはならないはずだ。

それどころか、「考える会」の指摘は傾聴に値する。その主張はホームページで読めるが、定時株主総会におけるウェバーの説明よりも根拠のない楽観主義を排したリアリズムに富み、はるかに説得力に満ちている。

「シャイアーは3年前(2015年)までは売上高7000億円程度の中堅企業でしたが、過去2年間にバクスターの血液事業子会社バクスアルタや希少病の家族性血管浮腫(HAE)で成功したバイオベンチャーなどを買収して、
売上高を1兆7000億円へと2・4倍にしました。
その結果、原価率が急上昇して粗利率が低下、さらに急増した無形固定資産の償却費によって営業利益率は大幅に低下しています。合併シナジー(おもにコスト削減)が期待通りに実現せず、利益率の回復に時間がかかっている状況です。
そこへロシュ(中外製薬)が開発した二重特異性抗体の血友病治療薬が承認され、主力とする血友病治療薬の売上が大幅に減少する見通しとなりました」

「武田薬品の昨年12月末時点の借入金は1・1兆円でしたが統合後は6兆円を上回ります。合併会社の売上高2年分に相当する借入れとなり、返済不能となるリスクが大きくなりますが返済計画については未だに説明がありません」(ホームページより一部抜粋)

その結果、「考える会」は統合後の新会社について「毎年3500億円の追加負担」が発生し、「純利益はほぼゼロ(20億円程度)」まで落ち込む見通しです」と予測している。寡聞にして、こうした悲観論を覆す武田側の有力な反論を知らない。

しかもウェバーは今になって突然、「買収を繰り返して拡大してきたシャイアーは研究開発に力を入れて来なかったことから統合にあたっては摩擦を伴う重複の解消は必要ない」(6月13日付ブルームバーグ配信記事)などと言い出している。
だが、「考える会」も批判しているが、今回の巨大買収が必要な理由として、シャイアーが希少病や遺伝子治療などの「研究開発型」に秀でているからと説明してきたのは、ウェバー自身ではないのか。
我々は今後、長谷川閑史が進めてきた「グローバル経営」の究極の惨状を目撃することになるのだろうか。(敬称略)

http://www.medical-confidential.com/2018/08/03/post-7973/