>>57続き

■新たな柱育たず

これらに続く第4の柱も育っていない。シャイアーの資料によると新薬候補として30以上の開発プログラムを持つが、その半数が適応拡大など製品寿命の延長を狙ったものだ。「ブロックバスター」(年間売上高が10億ドルを超える大型薬)になり得るものは少ない。

唯一のブロックバスター候補は、米国で8月に承認された新薬「タクザイロ」。手足や臓器などが突発的に腫れる「遺伝性血管性浮腫」という難病の治療薬で、既存薬よりも使い勝手が高い。「5〜6年後に売上高1600億円ほどに育つかもしれない」(橋口氏)。
同じく難病のアレルギー性食道炎の新薬「SHP621」もブロックバスターとまではいかず、「ピーク時の売上高予想は500億円ほど」(橋口氏)。ほかは小粒の製品ばかりのようだ。

ただし盤石なグロブリン製剤に加え、血液製剤やそのほかの希少疾患の新製品投入で落ち込みをカバー。「シャイアーの売上高は今後10年間に年率マイナス0.5%で推移し、ほぼ横ばいの見込み」(関氏)。城が傾くことはなく、「ろう城戦」には耐えられそうだ。

もっとも、これらの状況から浮かぶ最大の課題は、シャイアーの新薬シーズは今のところ期待薄であり、武田は自力で新薬を生み出していかざるを得ない点だろう。
武田はここ15年、自社で大型新薬を生み出していない。湘南の研究所では、1200人いた研究員を、重点領域の絞り込みで300人程度に減らす大リストラも断行した。
武田からスタートアップ企業に転身したある元社員は「研究所内のモチベーションは下がっている」と打ち明ける。

研究開発費にも不安が残る。武田は17年に約3000億円を研究開発に投じていた。買収後は4000億円強に増える見通しだが、1兆円規模を投入する欧米大手の半分の規模でしかない。

7兆円弱の買収が実現しても、どれだけの買収効果を生み出せるのか。武田の株価は年初来安値圏で推移しており、市場や投資家も買収後の成長戦略に注視している。シャイアー製品で稼げる間に、武田が新薬を創出できるかどうかが買収の成否を握っている。

(企業報道部 野村和博)[日経産業新聞 2018年12月4日付]
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38491590T01C18A2X11000/?df=2