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■創業者一族の元社長は買収に反対

特にそのことが強く印象付けられたのは、今回、創業者一族の元社長である武田国男がこれまでの沈黙を破って、シャイアー買収に反対の意思表示をしたからだ。

『朝日新聞』11月29日付(電子版)によると、「国男氏は、武田薬品が他社を買収して会社の規模や海外の販路を広げることには賛成だが、シャイアーの企業価値を分析したところ『借入金も多く、リスクが大きい』と指摘。買収反対を決めた」とされる。

武田の創業者一族の意向は、「武田薬品の将来を考える会」によって代弁されているとの観測は以前から伝わっていたが、ここまで明確に個人として「買収反対」が表明されたのは初めてだ。
国男と言えば、自称「落ちこぼれ」ながら、一族の七代目として当主(社長)になるはずだった実兄が46歳で急死したため、予期せぬ人事で1993年に社長に就任。
当初、「バカ殿」と周囲では陰口をたたかれながら、社内の大改革を断行し、就任9年目で連結決算は売上高1兆円、純利益2356億円を達成。「異端の経営者」として名を残した。

そのため、今回の「反対表明」はそれ相応のインパクトを与えたはずだが、かつて国男が後継者に指名したのは、社内で「宇宙人」と呼ばれていたあの長谷川閑史。
長谷川はことごとく稼ぎ頭の新薬開発に失敗した挙げ句、「グローバル化」を進めて海外企業の買収路線に走り、「2兆円をドブに捨てた男」という汚名を頂戴した。
加えて、長谷川が指名した後継者は、フランス人のウェバー。創業者一族から「会社を外資に売り渡すつもりか」という猛反発が起きたが、後の祭りだった。

今後の進展如何では、ウェバーは下手をすると「7兆円をドブに捨てた男」になりかねない。そうなったら、武田の創業238年の歴史が閉じられる事態に陥る。
当然、その遠因となるだろう「2兆円をドブに捨てた男」を後継者に指名した国男まで、責任追及の累が及ぶのも避けがたい。
その国男が今になって、あえて「リスクが大きい」と叫ばざるを得なくなっているのは皮肉な巡り合わせだが、「7兆円をドブに捨てかねない男」は聞く耳を持たないようだ。