武田薬品、新社屋はLGBT対応 社内SNSグループも活動

武田薬品工業は新社屋「武田グローバル本社」の移転を機に男女別のトイレに加え、LGBT(性的少数者)にも抵抗感なく使える多目的トイレを各階に設置した。
同社は「ダイバーシティー(多様性)・インクルージョン(包摂)」を行動規範に掲げており設置はその一環。
昨年には、社内にLGBTの認知度向上を目指す部署横断の社内SNSグループ「I support LGBTQ」(構成員約100人)を立ち上げ、今年5月には渋谷で開かれた差別をなくすためのパレードにも有志で参加している。

多目的トイレなどLGBTの取り組みについて、2日の新社屋の見学会でクリストフ・ウェバー社長は報道陣に
「多様性を持たせると同時にきちんと自分が受け入れられていることが感じられる文化を社内につくっていきたい」と述べ、多様性を受け入れ企業の活力にしていく狙いを語った。

LGBTはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(心と身体の性の不一致を感じている人)の頭文字を取ったもの。
電通が2015年に行った調査によると、日本人の約7.6%がLGBTに該当し、血液型がAB型、または左利きの人の割合とほぼ同じという。

I support LGBTQの呼び掛け人で武田薬品の人事を担当するグローバルHRの井川多英子氏は日刊薬業の取材に、
「武田薬品の何千人の社員のうち、数百人単位でこうした方がいる計算になる。もし社内で居心地が悪くなり辞めてしまっては人事部門としても優秀な人材を逃すことにもなる」と述べ、多様な存在として認識、受容する環境整備に取り組んでいるとした。

社内の認知度向上のため昨年、外部から4人の当事者を本社に招き体験談を聞く機会を設けた。全国の拠点、研究所にウェブで動画配信して数百人の社員が聴講した。

演者は「パートナーが入院した時に身元引受人になれずつらい思いをした」など日常生活で生じている不都合を語った。

勉強会に参加したGMBUマーケ部ニューロサイエンスGの松谷光博さん(35)は取材に「LGBTの名称を聞いたことがあるが内容は知らなかった。性別に違和感を抱く人に製薬企業として何ができるかと考え実際に動いてみた」と述べた。

勉強会で「性別の欄に丸を付けるのに抵抗を感じている」との演者の発言をヒントに、松谷さんは武田薬品が医療機関に提供しているある疾患の患者向け資材で患者が性別に丸を付ける欄を削除した。

「医師が定期的に患者を受診し状況を把握し、かつ性差で影響を受けない疾患であることから性別の欄を削除しても問題ない資材で対応した。LGBTの方のストレスを1つ減らしてあげることができた」と振り返った。

松谷さんは勉強会をきっかけにI support LGBTQに参加し、パレードにも加わった。

武田薬品が新社屋に設置した多目的トイレ「Multipurpose」は車いすでの利用や、人工肛門の器具の洗浄、乳児のおむつ交換が可能で、LGBTにも抵抗感なく利用できるよう各階に設けた。

また「アンコンシャスバイアス」(無意識の偏見)を取り除くため、トイレの表示プレートを赤と青の色で性別を分けずシルバーに統一した。

井川氏は「自分が知らない視点を手に入れたらこんなことも考えないといけないというのが見えてくる」と述べ、多様性を許容する環境で誰もが居心地良く過ごせる職場環境を今後も整備していきたいとした。

https://nk.jiho.jp/article/134426