気づけば「社員9割が外国人」 武田薬品日本人社員の試行錯誤

■成功体験を「言語化」する
グローバル企業で活躍するには、どんなスキルが必要なのか─。江原は「成功体験を『言語化』して周りに伝えること」という。

国籍や文化が異なる人と一緒に仕事をして問題の解決策を探るには、何かの分野で秀でて、結果を残した経験が欠かせない。だが、実績があるだけではダメ。経験をもとに相手を説得する技術がないと、周りを巻き込めない。
そんな思いから、部署の数人のメンバーでの会議を定期的に開いて業務の状況をプレゼンテーションしてもらい、経験を言葉で説明する力の底上げをめざす。

国際色の強さにひかれて入社する若手も増え始めた。

「ニューロサイエンス創薬ユニット」の山口奈美子(31)もその一人。国内唯一の研究所「湘南ヘルスイノベーションパーク」(神奈川県藤沢市)で、アルツハイマー病など神経系疾患の治療薬の研究をしている。

新薬研究に関心を持ったのは中学時代。祖父ががんで亡くなり、周りには重い持病がある友人もいた。薬で多くの人を救いたいとの思いで大学院まで薬学を学び、16年に入社した。

中学時代から多い時はほぼ毎日、ラジオで英語を聴いた。留学経験もないが、英会話には不自由しない。武田を選んだのは「世界中でビジネスをしていて、『一錠の影響力』が大きい会社で働きたかったから」という。

武田は2000年代以降、自社では革新的な大型新薬を生めない苦境に陥っている。状況を打破するため、シャイアーのほかにも米国やスイスの製薬企業を買収。グローバルな創薬体制をつくる動きを加速させた。

■「仕事中のクリパ」提案に戸惑いも
山口は、新薬候補が患者に効くかを確かめる「臨床試験」についての会議に加わることがある。多いときは、外国人が半数近く。開発中の新薬はどの国でニーズがあるのか、競合他社の開発は進んでいるのかといった世界各地の情報が伝えられる。

とまどいもあった。中国出身の社員が昨年12月、仕事の時間にクリスマスパーティーを開くことを提案した。
「メリットがあるのか」「そもそも仕事の時間を使って良いのか」。日本人ではあまり考えないような提案に、そんな不安もよぎったが、飲食をしながら仕事内容を伝え合ったことで、その後の研究で相談できる人が増えたという。

今では、国籍や考え方が違ってもオープンマインドで相手を受け入れ、自分の意見は物おじせず言うことを意識している。
「周りを巻き込み、それぞれが持つ『プラスの情報』を良い方に高められるよう意識することは、控えめと言われる日本人がグローバル企業で存在感を示すためにも大事だと感じます」

https://globe.asahi.com/article/12424488