できそこないの男たち   福岡伸一著  光文社新書  820円

 文字通り、男が偉いのではなく、生物の基本仕様は女性であって、男はそこから紡ぎだされる出来損ないに過ぎない――と言う。

 イブはアダムから作られたと、聖書は述べているが、実際は逆で、メスからオスが作られたのだと言う。
 男と女の身体の違い。小学校高学年だったか、または中学生になったばかりの頃だったかもしれない。
「女の子の陰部には、穴が3つある」と聞かされた。
その時はとても驚いた。何故なら自分の身体には、2つの穴しかなかったからだ。
「神様が、そんな不平等なことをされるはずがない」と、思ったものだが、も
ちろん私がクリスチャンであった訳ではなく、ただ、適当な答えが見つからなかったので、狼狽して神様を持ち出しただけなのだろう。
しかし、では子どもは何処から産まれるのか? そんな素朴な疑問も持っていなかったのかもしれない・・・・。

 しかし、発生学的に言っても、女性の身体がカスタマイズされたのが男であるというのは、確かな事実なのだろうと思われる。
 女性の大陰唇を縫い合わせたのが陰嚢であり、小陰唇を縫い合わせて作ったのがペニス。亀頭はクリトリスである。
だから、陰嚢の裏側には、きっちりと縫い目が続いている(それを、蟻の門渡りと言う)。
確かに、逆(男の身体の突起物を切り分けて女の身体を作るという)のは、想像しにくいですね。 
(詳細は、P158からの「刺客の仕事」をお読み下さい。とっても面白いです!)

 しかし、女の出来損ないが男だとしたら、女の遺伝子をほかの娘たちに運ぶのだけが、本来の男の仕事だとしたら、
何故その男たちが今の世の中の権力を握っているのか? 何故女性たちを支配しているように見えるのか? 
当然の疑問が浮かびますが、その答えは、261ページからの「余剰」という文章を読んでみてください。
福岡先生からの答えが載っています。

最後に、福岡先生からの問題提起を記しておきます。
―― それにしてもなぜ男はここまで女性に尽くしてしまうのか。この物語
の最後に、そのことについてすこしだけ考察を進めてみたい。
端的にいえば、男が尽くすのは“あの”感覚から逃れられないからである。
それは男を支配する究極の麻薬だ。それがどうしてもほしくなる。してもしてもまた、した後からその感覚がほしくなる。

福岡先生は、その性的快感を加速度を感じる感覚と似ているという。
そして、彼の締めくくりの文章は、以下の如くになる。
―― 自然は、加速を感じる知覚、加速覚を生物に与えた。進化とは、言葉の本当の意味において、生存の連鎖ということである。
生殖行為と快感が結びついたのは進化の必然である。そして、きわめてありていにいえば、
できそこないの生き物である男たちの唯一の生の報償として、射精感が加速覚と結合することが選ばれたのである。

射精の快感は、ジェットコースターに乗った時の「加速感」に似ている? 納得される読者も、納得しかねる読者もおられるのではないでしょうか? 
最後に、私からの唯一の質問を、福岡先生に呈してみたいと思います。
―― では、女性の性的快感というのは、何故与えられたのでしょうか?
子どもを産むという行為に対する代償として? はたまた、その感覚はやっぱり加速感に似ているものなのでしょうか?