世界経済「米国機関車論」に暗雲 日欧もたつき金利低下促す
2014/10/10 18:17 日経速報ニュース
 国際金融市場では、主要国の長期金利が先行き低下するとの観測が引き続き根強い。9日の海外市場から
10日の東京市場にかけては、米国や日本の国債利回りが「当面の下限」と目される水準まで低下(国債価格は
上昇)したことからいったん買いが引っ込んだものの、早晩買いは再開するとの声が消えない。世界経済の「機
関車」役と期待される米国には低インフレの懸念が浮上。本当に利上げに踏み切れるのかどうか、疑問視する
ムードが漂い始めた。

 「足元の米金利低下は、水準面からやや行き過ぎている」。野村証券の杉崎弘一クオンツ・アナリストは10日、
こう指摘した。米長期金利の指標となる10年物国債の利回りは9日のニューヨーク市場で一時2.27%まで低下
し、2013年6月19日以来およそ1年4カ月ぶりの低水準を付けた。13年6月19日。米連邦準備理事会(FRB)の
バーナンキ議長(当時)が量的金融緩和に伴う証券購入の規模縮小を示唆したまさにその日だ。
 杉崎氏はシカゴ市場で取引される米10年債先物についても「13年6月以降の高値圏にある」と指摘。FRBが
ひたすら緩和拡張モードにあった最後の時期と同じ水準まで金利が下がりきったという事実を前に、積極的に
買い進む雰囲気にはなりにくいとの見方が広がったのは理解できる。何しろ、現在のFRBは証券購入の停止に
続いて利上げの開始すら視野に入れているのだ。

 国内債券市場でも金利低下にいったん達成感が広がった。典型は中短期ゾーンだ。日銀が国庫短期証券
(TB)を大量に買い入れたことなどからTBのマイナス利回りが定着。中短期の国債利回りにも低下圧力がか
かった結果、9日には残存期間ほぼ4年の国債(5年物国債115回債、残存3.93年程度)利回りが0.1%に低
下した。日銀が実施している期間最大4年貸出増加支援オペ(公開市場操作)の貸出金利と同水準で、当面
の4年債利回りの「下限」とみなされてきた。年限の近い新発5年物国債の利回りは10日、0.150%と前日比
0.015%上昇した。

 もっとも、きょうの一服をもって中長期の金利低下局面が終わりを迎えたとの見方は少ない。日本とユーロ圏
が積極的な金融緩和を推進する一方、米国は金融緩和の出口を模索してきた。その結果であるドル高が、い
ま注目されている。
 8日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月開催分)は、委員らがドル高に懸念を示していた
ことを明らかにした。通貨高は米国の輸出に打撃になるうえ、輸入物価の押し下げを通じて米国内の物価を
上がりにくくするためだ。アール・ビー・エス証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストは「FRBが実際に利上げ
に踏み切れるかどうか不透明感は強い」とみている。

 議事要旨からは、米国外の景気減速に対するFRBの強い警戒感も読み取れる。「米国が世界経済を引っ張り
上げる」シナリオから「米国がもたつく日欧などに足を引っ張られる」構図へ。米国につれて世界の金利が上がる
との見方から、連鎖的に金利が低下する流れへの転換と言い換えてもいい。
 メリルリンチ日本証券の大崎秀一債券クオンツストラテジストは「金融緩和を背景に日欧の金利低下が続け
ば相対的に米国債に割安感が生じるため、米金利は上がりにくい状況が続く」と指摘する。米金利の先高観が
後退しつつあるなか、国内金利も低位安定が続く可能性が高まっている。〔日経QUICKニュース
(NQN) 鈴木孝太朗〕