前にも出した気がするけど岩波講座の福井関係部分。別の本だけど>>103-104も金田一によるもの。

 最後に、岐阜県西隅の方言は、さすがに地理的位置を反映して、京阪アクセントに近いアクセントをもっている。
たとえば、二2・3の語彙はカミ(高┐低)型、三2・3aはアズキ(高高┐低)型、三2・3bはイノチ(高┐低低)型である。
もっとも垂井町のもの、関ヶ原町のものなどは、いずれも型の区別が少なく、京阪アクセントにあるような、語頭の
滝をもたない。なお垂井町のものは二1と二4がカゼ(高高)で同じ型、二2・3・5が同じカワ(高低)型であるのに対して、
関ヶ原町のものは二1・4・5が同じカゼ(高高)型で、二2・3がこれに対してカワ(高低)型だというようなちがいがある。
(中略)
 最後に福井県はきわめて複雑なアクセントの変化のある地域である。まず、若さは中央の小浜地区など、
京都・大阪の方言とよく似たアクセントをもつ。一方、越前の東隅は東隣の岐阜県の方言と同じで内輪東京式
アクセントをもつ。他の地域のうち、敦賀地区、大野地区、若狭の高浜地区などは、先に述べた岐阜県の垂井
言に似たアクセントを有する。福井・武生など、県の中心部の地域は一型アクセントであり、南条郡今庄村地区
には二1・2・3がカゼ(高┐低)型、4・5がカサ(低高)型という、他に例のないアクセント体系をもつ。三国町をはじめ
福井・武生を囲む周囲の地区には、二1・4・5がカゼ(高低)型〜カゼガ(低高低)型、二2・3がカワ(低高)型という、
これまた全国に類のないアクセントを有し、その高低の相は京阪式よりはむしろ東京式に似ている。ただし型の
区別ははっきりせず、心細いアクセントである。
(中略)
 福井県三国地区には、東京式アクセントとは言えないが、外見が東京式アクセントに近いアクセントが行われている。
アクセント以外の面で周辺の地区と特にちがってもいないこの方言が、アクセントだけ特殊の変化を経過したとは
考えがたい。このアクセントは、表9のようにして出来たものとでも考えるのがいいと思う。*は東京式アクセントの形である。
**も1の語彙に関してはそうだ。このように考えると、このアクセントは、途中東京式アクセントのような状態を経て、
さらに変化したアクセントということになる。東京式そのものも京阪アクセントが一変して出来たという疑いがいよいよ
強まってくる。

表9
拍数   群  語例
     1  「風」「蚊が」 高高型  ↘
二    4  「笠」「手が」 ┐低高型 →低高型** →低低型 → 高低型*
     5  「雨」       ┐低降型 ↗
     2・3 「川」「山」   高┐低型 →低高┐型* → 低高型
(中略)
 最後に一型アクセントの由来であるが、大体地理的に近いところに行われている方言で、アクセント以外の点で
よく類似した方言で、型の区別の少ないもの、はっきりしないものがある場合には、それから変化したと解釈するのが
よいと思う。
(中略)
 福井市付近の一型アクセントは、周辺にある準東京式のものが曖昧になって出来たものであろう。