結論
以上の考察から明らかなように、養老律令・継嗣令の割注「女帝子亦同」は、決して女系継承(女性天皇の子への皇位継承)を容認したものではない。
それは、即位前に父を亡くした不遇の皇女(氷高皇女・吉備皇女)に対し、「男帝1世ではないが、母(元明天皇)の即位をもって最高位の内親王に遇する」とした、極めて限定的な身分秩序上の不整合を解決するための政治的救済規定であった。そして、この「女帝もまた同じ」という特別措置の記載自体が、日本の皇位継承秩序が「天皇=男帝」を大前提とする男系原則によって貫かれていたことを、何よりも雄弁に、かつ逆説的に証明しているのである。

(注1) 例えば、小林よしのり『愛子天皇論3』(扶桑社、2025年7月)などでは、「女性天皇となった愛子さまが結婚された場合、その皇婿との間に生まれた子も親王となり、ゆくゆくは天皇になれる」とする解釈の歴史的補強として、この割注が引かれることがある。しかし本稿が明らかにした通り、これは律令の「身分規定」と「即位資格」を混同した誤読である。