>主婦・嶺 貴美恵・大阪府泉大津市・81歳(2006年4月7日当時)

桜一輪挿して出撃した隊員 >>117

 戦時中、福岡県八幡市(現・北九州市)に住んでいた。休日は友人たちと小倉の郊外
にあった陸軍曽根飛行場で勤労奉仕をした。若かった私たちの仕事は「たこつぼ掘
り」。空襲の際、人間一人が逃げ込む小さな壕である。

 係りの兵隊さんは上官の目を盗んで私たちに草抜き程度の仕事を命じ、手が荒れない
ようにいたわって下さった。近くの山で白ユリ、紅ツツジなどを摘んで配ってもくれた。
 
 飛行場から戦闘機が出撃した。爆音を響かせる中、整列する隊員たちは白鉢巻き、白
マフー姿。そして、なぜか飛行帽に一輪挿した花は桜だった。

 季節が異なれば他の花だったかもしれないが、私は桜のほかには記憶がない。自らの
散り際を、潔く散る桜に託した当時の若者たち。桜は残酷な美意識の象徴だったと思う。

 一昨年亡くなった友人は生き残られた特攻隊員から聞き書きをしていた。北海道から
沖縄まで精力的に行動したが、過労で急死した。昨春、友人宅を訪問した折、彼女が
植えた桜は満開でひとしお悲しかった。

===== 「潮」での常連の様だ。学会系か? 後段で死者が出てるのが同じパターンである。