産経抄 1月13日

 人前で話すのはからきし苦手だが、講演慣れした同僚によると、壇上に立って自分の意見を聞いてもらうのは、とても気持ちのいいものらしい。新聞記者は書くのが仕事だが、なぜか話す方がおもしろい人もいる。秘訣(ひけつ)は声を張り堂々と。

 ▼論旨明快、自信を持った語りは聞く方も気持ちがいい。11日の土曜に行われた「土光杯全日本青年弁論大会」は18歳から35歳を対象に、小論文審査などを経た10人の若者が壇上に立ち、会場を沸かせてくれた。

 ▼土光杯は行政改革を推進した土光敏夫氏の「若い人の声を聞きたい」のひと言から始まり、36回を数える。昭和60年の第1回大会では土光氏がポケットマネーでトロフィーを用意したエピソードも残る。

 ▼今年のテーマは「令和新時代の日本人像」で、最優秀賞の土光杯は会社員、舎川(しゃがわ)俊平さんが獲得した。演題「夢がないなら“宇宙飛行士”を目指せ」の「宇宙飛行士」は、「どでかい夢」の代名詞だ。訓練を重ね心身を鍛え、自信を持って挑む象徴的存在でもある。

 ▼舎川さんは、ネット上で資金を募り宇宙関係の事業を支援するクラウドファンディングに関わった経験とともに、土光さんら先人が高い目標を掲げ日本を築いてきた歩みに触れ、心の底から本気になれる夢の大切さを訴えた。

 ▼土光氏の出身地にちなんだ岡山賞を受賞した会社員、稲田ひかりさんは、IT(情報技術)化が進む職場の体験などを踏まえ、本当に何をしたいのか「自分の軸」が必要になると指摘した。
受賞には至らなかったが、現代に通じる「武士道」や「日本の神話」の価値を語る弁士もいた。「正解」が見えない時代だからこそ、時代を超え伝えたいものがある。それを若い人たちから聞けたのは頼もしい。