産経抄 1月29日

 米プロバスケットボール(NBA)のスーパースター、コービー・ブライアントさんの名前の由来は、よく知られている。元NBAの選手だった父親が、米国内の和風ステーキ店で食べた神戸牛(KOBE BEEF)から名付けた。

 ▼読み方だけ「コウベ」ではなく米国風とした。血統を守り大切に育てられた神戸牛は、米国人にとってあこがれのブランドである。2009年に来日したオバマ大統領も外交ルートを通じて所望していた。

 ▼名前の通り、NBA入りするとたちまち才能を開花させた。所属チームのレーカーズを5度の優勝に導き、史上4位の通算3万3643得点を記録した。米スポーツ界では、マイケル・ジョーダンさんが「神様」とされる。その後継者として誰もが認める存在だった。

 ▼もっとも、大きな挫折も経験している。NBAの参加が認められたバルセロナ五輪以来圧勝を続け、「ドリームチーム」と呼ばれた米国代表が、04年のアテネ五輪では銅メダルに終わる。ブライアントさんの出場もかなわなかった。

 ▼前年に婦女暴行罪で起訴されていたからだ。無罪にはなったものの、スターのイメージは引き裂かれた。4年後の北京五輪では、大車輪の働きで金メダル獲得に貢献する。歓喜の雄たけびを上げた姿は語り草である。引退後は女子バスケ界の発展にも尽力していた。

 ▼ブライアントさんと13歳の娘のジアナさんら9人が乗ったヘリコプターが26日朝、ロサンゼルス近郊で墜落して全員が死亡した。
トランプ大統領とオバマ氏は、それぞれのツイッターで哀悼の意を表した。米国内の深刻な分断を忘れさせるほどの衝撃の大きさである。ニューヨーク・タイムズ紙は、それをケネディ大統領暗殺になぞらえていた。