>>428
(続き) (宰相の「ことば」)

岡田憲治さん(政治学者、専修大学教授)   心動かす「理」に敬意もて

ジョージ・オーウェルの小説「1984」には、ダブルシンク(二重思考)という概念が
出てきます。独裁権力が正当性を維持するため、民衆が言葉の矛盾に疑問を持たない
ように洗脳するのです。そこには「戦争は平和である」というスローガンが登場
しますが、安倍首相が国会で語った「募ってはいるけど募集はしていない」は、
不条理さにおいてこれを超えています。

笑い話ではありません。

日本で議会政治が始まって130年。行政府の最高権力者に国会で何を聞いても
「理」の言葉が返ってこないという事態は過去にありませんでした。首相はまるで
「選挙で選ばれた人間がやりたい政治をするのに、細かい理屈が必要なのか?」と
本気で思っているように見えます。

政治家は言葉が全てです。小泉純一郎元首相は、ワンフレーズ・ポリティクスという
悪夢を招いた罪が非常に重い。しかし、かれは「郵政民営化が必要だ」と語り、
民業圧迫やら郵貯350兆円の開放やら、あらゆる理屈を動員した。「民営化不要」
という世界観と徹底的に敵対し、真偽は別にして多くの人に「民営化が必要だ」と
信じ込ませることに成功した。これは、若い頃から大蔵委員会で理屈をこね回し、
自民党の先輩議員相手に言葉を鍛えていた経験があったからで、自分の言葉を持って
いたのです。

(続く)