>>696
(続き)

文化の政治利用「メディアは指摘を」

政治権力は古来、最新のエンタメやメディアを利用してきた。ナチスの党大会の
記録映画「意志の勝利」など枚挙にいとまがない。NHK連続テレビ小説「エール」で
注目を集める作曲家・古関裕而も、軍などの求めで戦時歌謡や軍歌を次々と世に
送り出した。

なぜ権力は文化を利用するのか。近現代史研究者の辻田真佐憲さんは「官製の強制的で
退屈な娯楽は民衆の反発を生むことが多いが、娯楽性に優れたものには抵抗感を覚えず、
受け入れられやすい」と話す。今回の首相の動画は炎上したが、政治家が日常生活を
SNSなどで公開することは、意外な一面を見せて親しみやすさを感じさせる戦略でも
あるという。

うちにこもることが求められるいま、SNSは貴重なコミュニケーション手段だが、
権力者が直接メッセージを発信できるようになったことで、情報操作の恐れも
高まっている。

今回の動画について菅義偉官房長官は「ツイッターでは過去最高の35万を超える
『いいね』をいただくなど多くの反響がある」と説明した。「いいね」は備忘録的に
使われる場合もあり必ずしも賛意を意味しないが、この発言をそのまま伝えた
メディアは少なくない。遠藤薫・学習院大学教授(社会情報学)は、メディアの姿勢が
極めて重要だという。「こうした報道では、多くの人びとが動画を好意的に評価したと
誤解されかねない。メディアは誤解を招きかねない情報の危うさを指摘し、ネットを
あまり知らない人にもその背景を説明する責任がある」

(終り)