産経抄 2月27日

 日本を代表する高級ブランド牛といえば、松阪牛が思い浮かぶ。ただ、松阪牛は品種名ではなく、全国各地で育った黒毛和種の子牛を三重県松阪市とその近郊で肥育したものを指す。ちなみに、松阪市のホームページによると「牛」の読みは「ぎゅう」と「うし」のどちらも正しいという。

 ▼初めて聞いたときは驚いたが、物知らずゆえ似たような経験はいくつもある。スーパーで比較的安く手に入る魚である「カラフトシシャモ」が、実は本来の北海道産「シシャモ」とは別物で、大西洋産の英名「カペリン」という魚だと知ったのも成人してからだった。

 ▼食材は同じものでも地域により呼称が異なることが多く、少々の紛らわしさは仕方がないかもしれない。さまざまな呼び名やその由来を調べるのもまた楽しいが、それはあくまで食の世界の話である。政策の呼称が実態とそぐわなければ、たちまち羊頭狗肉(ようとうくにく)の悪徳商法とのそしりを招く。

 ▼立憲民主党は、新型コロナウイルス対策の独自の基本方針として「zero(ゼロ)コロナ」戦略を打ち出している。抄子は当初、人類は普通の風邪だって根絶できないのに、ゼロコロナとは随分と大風呂敷を広げたものだと思っていたが、勘違いだったらしい。

 ▼「zeroは0ではありません」。蓮舫代表代行は23日のツイッターに記した。はてと首をかしげていると、26日の党発表では「感染拡大の繰り返しを防ぐことで早期に通常に近い生活・経済活動を取り戻す戦略」と解説していた。どこがゼロコロナなのか。

 ▼旧民主党はできもしない政策を並べたマニフェスト(政権公約)を掲げた結果、マニフェストという言葉自体をほぼ死語へと追いやった。党名は何度変更しても、悪癖は抜けないということか。