産経抄 11月23日

 今月8日に行われたミャンマーの総選挙は、アウン・サン・スー・チー国家顧問が率いる与党・国民民主連盟(NLD)の圧勝となった。もっとも、スー・チー氏は国際社会からの厳しい批判にさらされている。イスラム教徒少数民族、ロヒンギャへの迫害にまったく収まる気配がないからだ。

 ▼スー・チー氏は1991年にノーベル平和賞を授与されている。当時、自宅に軟禁されていたスー・チー氏は、ミャンマーの民主化運動の旗手としてもてはやされていた。最近、賞の取り消しを求める声さえ出ているが、さすがにノーベル賞委員会は聞く耳をもたない。確かに受賞者の数十年後の姿など予想できるはずもない。

 ▼では、昨年受賞したエチオピアのアビー首相の場合はどうだろう。隣国エリトリアとの紛争を終結させ、国内でも民族間の融和に努める姿勢が評価された。それからわずか1年後にエチオピアは内戦の危機に陥っている。

 ▼政府軍と旧政権で中枢を占めていた「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」との戦闘が拡大しているのだ。隣国のスーダンに逃れた難民はすでに3万人を超えている。平和賞の授与は早すぎたのではないか。欧米メディアは賞の選定に疑問の目を向け始めた。

 ▼「早すぎる」といえば、「核なき世界に向けた構想と努力」を理由に2009年に受賞したオバマ前米大統領がまさにあてはまる。米国内の世論調査では6割が反対していた。案の定、その後も核兵器の拡散は止まらない。

 ▼そんなオバマ氏に強い対抗意識を抱いてきたのが、トランプ大統領である。予測不能の言動でしばしば世界を混乱させてきたものの、少なくとも在任中は戦争を起こさなかった。平和賞を強く望む気持ちは、分からなくもない。