産経抄 12月22日
昨日は二十四節気の冬至だった。「冬至の節はわたしのもっとも好きな日である」。作家の永井荷風は、大正10年12月に発表した随筆に書いている。
▼理由の一つは、「野菜の味最もよくその値(あたい)最(もっとも)廉(れん)なる時節である」からだ。確かに今年の冬も野菜の安値が続いている。冬至に付き物のカボチャに限らず、大根もカブもネギもうまい。とはいえ、荷風のようにこの季節を楽しむ気分にはとてもなれない。
▼新型コロナウイルスに翻弄された1年だった。とりわけ10月下旬から始まった「第3波」の感染拡大のペースは速かった。国内の感染者が累計で20万人に上ったとの報道もある。やはり冬の低温と空気の乾燥は、ウイルスの危険性を高めるとの専門家の指摘は正しかった。
▼明の時代の北京では、「九九消寒図(しょうかんず)」と呼ばれる冬至の日の風習があった。「九九」は、冬至以後の81日間を意味する。冬至の日に81個の梅の花の輪郭だけを描き、それから毎日1個ずつ花を塗っていく。「消寒図」とは塗り絵のようなものらしい。81日かけてすべての花を塗り終えたとき、花の咲き誇る季節を迎えているというわけだ。
▼中国文学者の井波律子さんが、エッセー集『一陽来復』(岩波書店)で紹介していた。一陽来復とは陰が極まって陽がもどってくること。一年でいちばん夜が長い冬至の日を指す。冬が去り春が来る。転じて、悪いことが長く続いた後でようやくよい方向に向かうことの例えに使われてきた。
▼この四文字がいつにも増して身に染みる年の暮れである。梅の花を描きながら厳寒を耐え抜いた北京の人たちを見習って、外出をできるだけ控えて人との接触を避ける生活をもうしばらく続けるしかない。一陽来復。春は必ずやってくると信じて。
産経抄ファンクラブ第275集
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30文責・名無しさん
2020/12/22(火) 06:50:48.73ID:F9P/hEEM0■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています