産経抄 1月4日

 正月休みは『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)を読み返していた。副題に「中国のオーストラリア支配計画」とある本書は、蜜月だった豪州と中国の関係が険悪となるきっかけにもなった。

 ▼著者のクライブ・ハミルトン氏は「日本語版へのまえがき」にこう書いている。「北京は西側諸国の間を仲違(たが)いさせるよう積極的に活動している…ただし…習近平(国家主席)の頭を最も悩ましているのは新型コロナウイルスだ」。確かに昨年2月はそうだった。

 ▼現在は自国が発生源となったウイルスの感染拡大を強権によって抑え込んでいる。あろうことかその“実績”を国際社会への影響力拡大に利用し始めた。独自開発のワクチンを利用した外交もその一つである。

 ▼元日付の毎日新聞は、未承認のワクチンが日本国内に持ち込まれ、一部の富裕層が接種を受けている事実をすっぱ抜いていた。提供したのは中国共産党幹部に近い中国人コンサルタントだ。日本政府が購入を予定している欧米製ワクチンの効果に疑問符が付いた場合の下地作りが狙いだという。

 ▼同じ日の読売新聞は、中国の「千人計画」を取り上げていた。日本学術会議の問題をめぐって話題になった人材獲得プロジェクトに、少なくとも44人の日本人研究者が関与していることがわかった。中国軍と関係が深い大学に所属する研究者も含まれる。中国は民生技術を軍事転用する「軍民融合」を国家戦略としてきた。日本人研究者が本人の自覚のないまま、中国の軍事力強化に協力している可能性がある。そんな悪夢のような実態を伝えていた。

 ▼コロナ禍を克服しつつ、中国の目に見えぬ侵略に備える。日本、そして民主主義を奉じるすべての国々にとって今年も試練の日々が続く。