6月2日(水)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・多事奏論

編集委員 高橋純子    国難と政治の虚無  現場の奮闘 盾にする過ち

新型コロナワクチン大規模接種の予約システムには「欠陥」がある。そう調査報道した
朝日新聞出版と毎日新聞に防衛省が抗議したことに呼応し、あの人が動いた。

「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える」(安倍晋三氏のツイート)

あまりに奇天烈な難癖に驚き、マスクの下で音読してみる。メガネが曇る。

大きな穴を見つけたら、「ここに穴があります(気をつけて)」と世間に知らせるのは
メディアとして当たり前のことだ。それを愉快犯呼ばわりする前首相のやり口に
なんだかすかり慣らされてしまった感があるが、本来とても異様なことである。

「敵」を名指すことで問題の本質から目をそらさせ、失政をごまかし、仲間内の結束を
高めて政権の底支えにつなげる。その便利な敵役に使われてきたのが一部のメディアだ。
権力の目の敵にされるのは、不愉快だけど名誉あること。寵愛されるよりよほど胸を
張れる。

とはいえ「身内」が犯した真正の罪への説明責任を、いまだ果たしておられぬ前首相
である。「桜を見る会」前夜祭をめぐる公設第1秘書(当時)の政治資金規正法違反に
ついてホテルの明細書を示す。公職選挙法違反の河井案里氏陣営に自民党が破格の
1億5千万円を出した経緯と使途について、当時の党総裁として説明する。それら
最低限の責任を放棄したまま放言している前首相は、この国の民主主義にとって
「極めて○○な○○と言える」――さて、〇に何を入れるべきか。ご意見募集します。

(続く)