6月14日


米国の著名なコラムニスト、トーマス・フリードマンさんは外国旅行のたびに、その国のマクドナルドのハンバーガーを楽しんできた。そのうちある仮説を思いつく。

▼マクドナルドのある国同士は戦争をしない。チェーン展開を支える中産階級が育てば、国民は戦争をするより、ハンバーガーを求めて列に並ぶ方を選ぶからだ。マクドナルドのM型マークにちなんで、「黄金のM型アーチ理論」と名付けた。

▼もっとも、フリードマンさんが著作でこの理論を発表するとすぐ、ほころびが明らかになる。1999年、コソボ紛争を起こしたセルビアに対して北大西洋条約機構(NATO)が空爆に踏み切ったからだ。今回のロシアによるウクライナ侵攻により、理論の破綻は決定的となる。両国とも多くのマックファンを抱えてきた。

▼旧ソ連末期、モスクワにマクドナルド1号店が開店すると、市民はこれまで経験したことがない店員の笑顔にたちまち魅了される。初日には3万人が押し寄せた。それから30年余が過ぎ、ロシア全土に850店を展開するまでになったマクドナルドは先月、撤退した。

▼それを引き継いだロシアの企業は12日、モスクワなどで15店を新装開店させた。マクドナルドの開店当時の熱気ほどではないものの、長い行列ができていた。モスクワっ子が屈託なく、ハンバーガーやポテトにかぶりつく。その瞬間にも、ウクライナではおびただしい血が流されている。

▼ロシア軍の海上封鎖により、ウクライナ産の小麦の輸出が妨げられ、中東や北アフリカの一部の国には飢餓の恐怖が迫っている。新店名「フクースノ・イ・トーチカ」とは、「おいしい。それだけ」の意味だという。残酷なブラックジョークとしか思えない。