6月15日

クリスマスの午後、群馬県中央児童相談所の玄関に置かれた、新しいランドセル10個が始まりだった。送り主は、プロレス漫画「タイガーマスク」の主人公、伊達直人を名乗っていた。それから12年、今も同じプレゼントのニュースを耳にする。

▼日本の小学生にとってランドセルは、なくてはならない学用品であり、卒業後は思い出の一品となる。オランダ語で、背負いかばんを意味する「ランセル」が語源である。幕末の日本に西洋式の軍隊訓練とともに入ってきた。明治の中頃から、学習院で教科書などを入れる用具として使われるようになる。全国に広がったのは戦後になってからだ。

▼もっとも最近の調査によると、小学生低学年の9割が通学時に重さを苦痛に感じている。心身の不調を訴える「ランドセル症候群」という言葉まである。タブレット端末などが、新たな負担となっているようだ。

▼今年4月に発売された「さんぽセル」は、そんな悩みを解決してくれる。車輪のついたアルミ製フレームを装着することで、キャリーバッグのようにランドセルを引いて運ぶ。装着したまま背負うこともできる。なんと医学生とともに開発したのは、栃木県日光市の小学生である。

▼ところがネット上では、批判のコメントが続出した。芸能人がテレビのワイドショーでそれに反論するなど、大きな話題となってきた。ただ本来論議すべきはランドセルについてではなく、その中身である。

▼文部科学省では4年前から、教科書やプリントなどの教材を教室に置いて帰る、「置き勉」を認めるようになった。現場の教師や保護者が導入に消極的なのはなぜだろう。大人の世界では通勤からレジャーまで、「手ぶら」が大流行だというのに。