6月23日

近代哲学の祖と呼ばれるイマヌエル・カントは1724年に当時の東プロイセン(ドイツ)のケーニヒスベルクに生まれた。ほぼ生涯をこの地で過ごす。第二次世界大戦でドイツが敗れた結果、ソ連領となり、カリーニングラードと改名される。

▼ソ連崩壊に伴いバルト三国が独立したため、カリーニングラードは、ロシア本土から切り離されてしまった。バルト三国の一つであるリトアニアとポーランドに挟まれ、バルト海に面したロシアの「飛び地」が、にわかに注目を浴びている。

▼リトアニアが、自国を通過してカリーニングラードとロシアを結ぶ鉄道貨物輸送の制限を始めたからだ。ウクライナ侵略をめぐる欧州連合(EU)の対露制裁の一環である。ロシアは猛反発し、プーチン大統領の側近は露骨な脅しをかけてきた。「リトアニア国民は深刻な影響を受けるだろう」。

▼もっともリトアニア政府によれば、輸送を禁止するのは石炭や金属製品など制裁対象となっている製品だけである。それにひきかえ、ロシアは黒海を海上封鎖してウクライナ産の小麦の輸出を妨げ、国際社会に飢餓の恐怖をまき散らしている。どちらの言い分に分があるのか明らかだ。ただし、道理が通じる相手ではない。

▼ポーランドとリトアニアの国境地帯「スバウキ回廊」は、北大西洋条約機構(NATO)の弱点といわれてきた。ロシアが制圧すれば、ロシア軍が駐留するベラルーシと飛び地が直結する。それはすなわち、NATO加盟国であるバルト三国の孤立を意味する。カリーニングラードには、核弾頭が搭載可能な短距離ミサイルが配備されている。