6月26日

わが国の標高、つまり土地の高さは東京湾の海面を0メートルとして測る。海は絶えず動くので、高さ測量の基準となる一点が地上に固定された。明治24年のことという。「日本水準原点」と呼ばれ、国会前庭内にある。

▼「東京都千代田区永田町1の1」がその所在地と聞けば、腑(ふ)に落ちるものがある。「一丁目一番地」。目玉となる政策をそう呼んだのは、通商産業省(現経済産業省)が最初らしい。いまは「最優先事項」の比喩として、政党や政治家が二言目にはこの表現を使う。

▼安全保障、急激な物価高、少子化、教育、憲法改正…。「一丁目一番地」は人それぞれとして、どの課題も下に置けぬこの参院選である。候補者は目の高さをどこに合わせて信を問うか、有権者は政策や人物をどう見極めるか。「目」が問われる点では変わらない。

▼ロシアのウクライナ侵攻は4カ月を超えた。尖閣諸島や台湾をにらむ中国も油断ならない。防衛費増額に理解を示す国民の声は音量を増し、岸田文雄首相は国政選挙のさなかに欧州での首脳会議に出席する。「一丁目一番地」の下に「一」をつけてもなお足りない。

▼それほど環境整備に急を要するのが、わが国の安全保障の現実だろう。ロシアを指弾することは、資源価格の高騰など経済の痛みに耐えることでもある。自由と民主主義の旗を振る国々の一員として、自覚も問われよう。世界を意識せざるを得ないこの選挙である。

▼国会の本会議場では当選回数の少ない議員が前から座り、前方の席を「一丁目一番地」と呼ぶという。誰もが通る道との意味か。こと選挙に関しては、新顔も中堅も古株もなすべきことは一つしかない。最優先事項を見誤らず、国難に立ち向かう。その覚悟を示すことに尽きる。