7月13日

JR東京駅丸の内南口の改札口を出ると、床に六角形の印が埋め込まれている。大正10年11月に当時の原敬首相が暗殺された現場である。遊説に出るため乗車口に向かっていたところを、群衆から飛び出してきた18歳の青年に刺殺された。政治腐敗への怒りを動機とする単独犯なのか。近くの壁に掲げられた事件のあらましを記したプレートは、「背後関係は不明であった」と結ばれている。

▼安倍晋三元首相(67)が奈良市での参院選の街頭演説中に銃撃され死亡した事件の捜査が進んでいる。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)については、特定の組織的な背景は確認されていない。

▼山上容疑者は、宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の名前を挙げて、「信者である母親が多額の寄付をして恨みがあった」と供述している。安倍氏がこの宗教団体とつながりがあるから、狙ったというのだ。ただ宗教団体の会長は記者会見で、安倍氏との関係性を否定した。謎は残ったままだ。

▼二人に共通するのは、その死が世界に与えた衝撃の大きさである。原は暗殺の直後に開催されたワシントン軍縮会議の成功に意欲を示していた。ニューヨーク・ヘラルド紙は、「日本だけでなく世界にとって大きな損失だ」とその死を惜しんだ。

▼バイデン米大統領は、まったく同じ言葉で哀悼の意を示していた。米国では訃報が届くとすぐに連邦政府施設で半旗が掲げられた。首相官邸よりも早かった。米国だけではない。弔意を示すメッセージは、259の国や地域、機関から、1700件以上が寄せられている。

▼国際社会でどれほど尊敬され、高い評価を受けてきたか。生前の安倍氏に批判的だった人たちも、認めざるをえないだろう。