7月21日

一昨日の朝、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手(27)が競技を退き、プロに転向するとの一報が職場に流れると、近くのデスクから素っ頓狂な声が上がった。「オリンピックには出るんだろう。プロ野球選手も出てたし」

▼身内の恥をさらしてしまった。フィギュアスケートの場合、五輪や世界選手権で活躍しているのは、スケート連盟に選手登録しているアマチュアである。プロになると大半の競技会には出場できない。

▼羽生選手は今後、五輪2連覇という大きな勲章を引っ提げて、アイスショーを中心に活動することになりそうだ。もともとフィギュアスケートは、技の難易度や完成度だけでなく表現力も採点対象となる、芸術的な側面を持つ。

▼華麗な演技で魅了してくれたら十分だと納得していたら、記者会見では4回転半への挑戦を続ける決意を語っていた。3連覇のかかった北京冬季五輪のフリーで前人未到のジャンプを跳んだシーンは記憶に新しい。失敗に終わったものの、世界で初めて公式に認定された。

▼ところで「プロ」とは、英語のプロフェッショナルの略である。その基となるラテン語由来の「プロフェス」は、「人前で自分の技能や知識を披露する」との意味がある。審判員を通さず、観客に磨き上げた技の出来栄えを直接問うようになる羽生選手にこそ、ふさわしい。

▼「信仰を告白する」とのもう一つの意味からは、まさにプロフェッショナルと呼ぶのにふさわしい歌手だった、故三波春夫さんの「名言」を思い出す。「お客様は神様です」。客へのへつらいではなく、真意は、神の前に立ったつもりで歌うというものだった。4回転半の成功は、なによりフィギュアスケートの神様が待ち望んでいる。