9月23日 コラム 産経抄

杉森務氏 作家の山口洋子さんに俳優の勝新太郎さんの思い出をつづったエッセーがある。銀座のクラブ「姫」のママでもあった山口さんにとって、勝さんは30年来の客だった。

▼「玉緒がさぁ」などと夫人の惚気(のろけ)を言いながらホステスをくどく遊びっぷりに感心していた。かと思えば、座っているソファやテーブルをセットに早変わりさせて映画ごっこを始めてしまう。野放図で駄々っ子でシャイな「最上の酔客」だったと、山口さんは振り返る。

▼「最上」は望めなくても、「最悪の酔客」にはなりたくないものだ。「ENEOS独裁会長」辞任の裏に「香川照之」超えの「性加害」。昨日の小紙に掲載された「週刊新潮」の広告の見出しにびっくりした人も多かっただろう。

▼石油元売り最大手のエネオスの会長を務めていた杉森務氏(66)は先月、「一身上の都合」で辞任していた。実は飲食店の女性従業員へのセクハラ行為が理由だった。「週刊新潮」は、俳優の香川照之さんが3年前、銀座のクラブでホステスに加えた性暴力の一部始終をすっぱ抜いたばかりである。

▼今回は、沖縄県那覇市の高級クラブが舞台となった。7月1日に地元の得意先と来店した杉森氏は酔いが回って、ドレスを脱がすなど乱行に及んだ。抵抗した女性は全治2週間のケガを負った。売り上げ10兆円を超える巨大企業のトップを務めた人物とは、とても思えない不埒(ふらち)な所業である。

▼「モモ膝三年シリ八年」。やはり「姫」の常連だった作家の吉行淳之介さんが『酒場のたしなみ』というエッセー集で紹介している。「桃栗三年柿八年」をもじって、酒場の女性に触れられるまでには修行の年月が必要だというのだ。もちろん現代では、「たしなみ」などではけっしてない。