産経抄 9月24日

村はずれの水車小屋で暮らす源吉の家は、母が悪霊をまつるほこらに夜参りしていると噂を立てられ、孤立していく。村役人らは、重い年貢への不満やいらだちをそらすのに好都合だと、それを放置する―。藤沢周平さんの時代小説『春秋山伏記』にあるエピソードである。

▼「村八分」という言葉がある。村のおきてや約束事に従わない者を、村全体でのけ者にする制裁である。ただし葬儀と火災は例外だった。葬儀は手伝い参列する理由は、感染症対策で素早く遺体を処理するためだとも、生者は死者を裁けないとの思想からだともされる。

▼「他人の弔意の示し方をいいとか悪いとか、特に党内で言い合うのは見苦しい」。日本維新の会の藤田文武幹事長は22日の記者会見で、立憲民主党について語った。野田佳彦元首相(党最高顧問)が安倍晋三元首相の国葬に出席を表明したことに、立民内部から批判が出ていることへの苦言である。

▼立民では、菅直人元首相(同)が欠席を表明しているほか、泉健太代表ら党執行役員もそろって欠席する。出欠は自由でも、中には届いた国葬の案内状の写真をSNSに投稿してはしゃぎ、欠席を強調する議員も複数いた。人の死や遺族の心情をどう考えているのか。

▼14日のBS日テレ番組では読売新聞の飯塚恵子編集委員が、各国の在京大使館に反対派から国葬不参加を求める手紙が送られていると証言していた。外交官らにこんな指摘をされ、言葉がなかったという。「日本はいったいどうなってしまっているんだ。普通に亡くなった人を弔えないのか」

▼国際社会の視線は厳しい。「今は政治ではなく日本全体の姿が試される局面です」。ジョージアのティムラズ・レジャバ駐日大使の忠告に、耳が痛い。