6月23日 産経抄

インドネシアを訪問中の天皇陛下は21日夜、ジャワ島中部のジョクジャカルタ特別州のスルタン(イスラムの王侯)、ハメンクブウォノ10世が主催する晩餐(ばんさん)会に出席された。共和国になぜ「王侯」がいるのか。話はオランダとの独立戦争にさかのぼる。

▼先代の9世がスカルノ初代大統領を支援した功績により、例外的にスルタンの称号の継承と世襲制の州知事との兼務が認められた。平成3年には上皇ご夫妻が当地を訪問されており、日本の皇室と交流があった。お二人の会話もさぞはずんだことだろう。

▼インドネシアは、上皇ご夫妻が平成最初の外国訪問先としてタイ、マレーシアとともに選ばれた国だった。天皇、皇后両陛下にとっても、親善を目的とした即位後初めての外国訪問である。両陛下はジョコ大統領自らが運転するカートで植物園を見学するなど、心のこもったもてなしを受けられた。

▼陛下と日本語を学ぶ大学生との間ではこんなやり取りがあった。「好きなアニメは何ですか」「NARUTO(ナルト)が大好きです」「私は徳仁(なるひと)です。特に関係はないのですが」。陛下の冗談によりその場は笑いに包まれたという。

▼今回の訪問のもう一つの大きな意義は、先の大戦が終わった後も現地にとどまりオランダとの独立戦争に身を投じた残留日本兵に、改めて光が当たったことだ。両陛下は日本兵の子孫と面会し、日本兵28人が埋葬されているジャカルタのカリバタ英雄墓地で黙禱(もくとう)を捧(ささ)げられた。

▼英霊に対する心からの敬意の念は、当然上皇陛下ご夫妻をお手本とされているのだろう。ご夫妻が続けてこられた戦没者を慰霊する旅により、平成の日本人は気付かされた。現在の平和がどれほど多くの犠牲の上に成り立っているのか。