7月2日 産経抄
つい先日まで青天井を映していた水の鏡が、いつの間にか青々とした稲の波に埋もれている。<もう空を容(い)れず青田となりにけり>富吉浩。日本の各地で、水から風へと主役のバトンが渡った田んぼは多いだろう。
▼きょうは、七十二候の半夏生(はんげしょう)である。昔から「田植えはこの日までに終わらせよ」と伝わり、農事の節目とされてきた。元日から数えて183日目、1年の折り返しでもある。壁の暦は気付けば半分にやせた。青田が黄金色の穂波へと装いを改めるのもすぐだろう。
▼振り返れば、列島が歓喜した野球日本代表の快挙があり、統一地方選があった。世の中が新型コロナ禍の束縛から解放される一方で、戦時下のウクライナから大統領が来日する歴史的一幕もあった。季節は音もなく移ろうようで、実は転変の日々を刻み続けていた。
▼梅雨の最盛期を迎えて、今度は天変である。本州の上空で足を止めた前線は雨脚を強め、各地で土砂災害などの恐れが高まっている。線状降水帯が発生した山口県では、河川の氾濫による犠牲者も出ている。これまでの大雨でゆるんだ地盤もあり、警戒が怠れない。
▼この時期の大雨を「半夏雨(はんげあめ)」、それに伴う洪水を「半夏水(はんげみず)」と呼ぶ地域もある。これら季節の言葉は人々の遺伝子に刻まれた水害の爪痕にほかならない。近年は大雨に「記録的な」の前置きが増えた。空をにらみ常に備えを迫られる時代に、われわれは生きている。
▼<木から木へこどものはしる白雨(はくう)かな>飴山(あめやま)実。雨粒が道にはじけ、あたりが白くなる夕立の点描だろう。にわか雨への新鮮な驚きと、小動物のような子供の愛らしさが引き立つ。路面冠水の大雨からは、生まれ得ぬ風情である。雨よ、心して降れ。詮無いつぶやきに気が滅入(めい)る。
産経抄ファンクラブ第298集
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343文責・名無しさん
2023/07/02(日) 07:44:41.60ID:CZROU+oO0■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
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