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産経抄
7月14日
往年のSFの名作『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン著)の新版が今月、東京創元社から出た。主人公にはいきなり謎が提示される。月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった男の死体を発見する。男はなんと5万年前に死んでいた。

▼人類が滅亡して何十万年先に、古い地層から放射性物質のプルトニウムやプラスチックの破片が見つかった。新たな地球の支配者となっていた知性体も興味をそそられるのではないか。かつて文明が存在していたのかもしれないと。「人新世(じんしんせい)」をめぐるニュースを知って、こんな想像をめぐらしたくなる。

▼46億年の地球の歴史はいくつもの地質年代に分けられる。3年前に「チバニアン(千葉時代)」と名付けられた地質時代は、約77万4千〜12万9千年前にあたる。約1万1700年前からは「完新世」と呼ばれてきた。

▼ところが20世紀半ばから人口が急増、工業化の加速や度重なる核実験も地球環境に大きな影響を与えてきた。新しい時代区分が必要だ。オゾン層破壊の研究で1995年にノーベル化学賞を受賞したオランダ人の大気化学者パウル・クルッツェンが提唱して以来、議論が続いてきた。人新世の訳語が当てられるのは「人間が引き起こした新しい地質時代」だからだ。

▼人新世を認めるのか、地質学の国際学会は来夏にも決定する予定だ。その前に代表する地層を選定する必要があり、カナダのクロフォード湖の湖底地層に決まった。別府湾(大分県)の海底地層も候補の一つとなり、「チバニアン」に続いて「ベップワニアン」が実現する期待もあった。

▼ただ「落選」はかえってよかったのではないか。母なる地球に人類が仇(あだ)をなすようになった不名誉な地層区分なのだから。