暑い。体温と同じかそれ以上の炎熱にやられ、仕事ははかどらない。ニュースを見れば、親子による遺体損壊事件だの保険金不正請求問題だの北朝鮮の軍事パレードだのと、いらだちは募るばかりである。そんな中で一服の清涼剤は米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手の大活躍だという人も多いことだろう。

▼大谷選手は27日、ダブルヘッダーに出場してまず1安打完封勝利後、第2試合で37、38号の2打席連発弾を放った。日本中に爽やかな風を吹かせてくれて感謝に堪えないが、猛暑だからこそありがたみが増す楽しみもある。<遠近(おちこち)の灯(とも)りそめたるビールかな>(久保田万太郎)。日暮れはビールの時間の開始を告げる。

▼楽しみ方の流儀はそれぞれだろう。「まだ残っているうちに注ぎ足してしまう。これは愚の骨頂で、一番ビールをまずくする」。作家の池波正太郎は、飲みほしてから注(つ)げと説く。とはいえ酒席でお酌を断るのは難しい。「ビールは大壜(びん)より小壜の方がうまい」。美食家の北大路魯山人は強調するが、いかにも飲みごたえが足りない。

▼粋人でもグルメでもない抄子の脳内では、細川たかしさんが歌った『応援歌、いきます』のさびの部分「生ビールがあるじゃないか」がこだまする。いろいろあっても、前を向いて「ぐっといこう」よと。

▼大リーグ公認の記録専門会社エライアスによると、ダブルヘッダーで完封勝利を収め、もう一試合で本塁打を記録したのは大谷選手が史上初だという。漫画『巨人の星』の主人公、星飛雄馬(ひゅうま)の魔球が「大リーグボール」だったことを記憶する世代には、信じ難い偉業だと思える。

▼酷暑はまだまだ続く。ビールを片手に大谷選手の活躍を眺め、この時代に生きる幸せを味わいたい。