作家、マーク・トウェーンのジョークという。「ハバナの博物館にはコロンブスの頭蓋骨が2つある。1つは少年時代、もう1つは大人になってからのものだ」。知識でなく笑いを看板にした博物館がキューバの首都にある、と。

▼真に受けてはいけないが、行くだけで土産話にはなりそうである。所蔵する資料の多さと展示の企画力、どちらも博物館の稼ぐ力を映す鏡には違いない。さりとて、笑って聞き流せない話もある。「光熱費が払えない」という東京・国立科学博物館(科博)からのSOSである。

▼昆虫や植物など500万点以上の標本には、地球環境の変化や産業技術の進歩など、人類の歩みが刻まれている。過去に学び、未来を見通すためのよすがだという。いい状態での維持には繊細な温度管理を要する。国からの交付金に上積みはない。

▼窮余の一策が目標額1億円のクラウドファンディング(CF)である。開始10日目の16日夕、サイトを見ると支援は6億6千万円を超えていた。寄せられた善意は未公開標本の展示やさらなる収集にも充てるとか。科学の底力を喜ぶか、国の手薄な支援を嘆くか。判断は難しい。

▼科博の関係者いわく、数多ある博物館の生存競争は激しい。真摯(しんし)なお願いが多額の支援に結びついた今回はいい。資金繰りの活路をCFに求めるのは、大学など他の公的組織も同じ。危機を再び迎えたとき、有志の財布を頼るだけでは心もとない。

▼国に文句を言っても「無い袖は振れぬ」と返されるのがオチだろう。先細りする科学の行く末を見るようで切ないが、ここは展示の企画力など稼ぐ力を身につけるほかない。はたと膝を打つ「コロンブスの卵」的な解決策は、どこかに転がっているのだろうか。