>>579 (続き) (耕論「国のために死ぬ=道徳的?」)

伊勢崎賢治さん 国際政治学者・東京外語大学名誉教授   政治家 市民守るのが責務

祖国のために命を捨てるのは高度な道徳的行為――そんな発言を政治家が広く市民に向かって行うのは、戦争への動員強化に
つながるあおりであり、国際人道法の精神に反します。

戦争のルールを定めたジュネーブ条約(1949年)は、戦闘員と市民とを区別し、市民を保護するよう義務づけています。

市民保護が重視された背景には、第2次世界大戦で住民虐殺を防げなかった経験への反省があります。民間人を装った偽装兵が
住民のなかにいるかもしれないという疑いをかけて一般市民まで殺傷する行為を、旧日本軍もしてしまいました。

いま政治家の責務は、市民は戦う用意がない存在であることを明示することです。国際人道法を盾に自国の市民を守る行為です。

逆に「我が国の市民はいつでも戦う用意がある」と明言したら、敵に無差別攻撃を正当化する機会を与えかねません。領土問題
などの対立点を交渉によって平和的に解決する環境作りのためにも、政治家は動員強化に慎重であるべきです。

その意味で僕は、ウクライナ侵攻以降、国家が国民を戦争動員する行為への許容度が世界中で高まっていることを懸念しています。

(続く)