9月21日(土)朝日新聞東京版夕刊文化面・藤田直哉のネット方面見聞録

イーロンVS娘に見る 世界的分断の争点

イーロン・マスクが実の娘(トランスジェンダー)に「凶悪なインセル(Heinous incel)」と罵られている。「インセル」とは、
攻撃的な非モテ男性を意味する言葉で、日本語における「弱者男性」と重なる部分もあり、全世界でその反乱が問題になっている。
アメリカではトランプ支持の傾向があり、イーロンもトランプを支持している。

発端は、大統領選の結果に大きな影響を与えると言われている歌手テイラー・スウィフトが、民主党のハリス候補への支持を
SNSで表明したことだった。共和党の副大統領候補であるバンスが、民主党の政治家は「惨めな」「子なしの猫好き女」であり、
子供がいないので国の未来と関係がないと発言したことへの意趣返しで、テイラーは「子なしの猫好き女(Childless Cat Lady)」と
署名に添えた。その後にイーロンは「わかった、テイラー、君の勝ちだ、私はあなたに子供を授け、一生懸けて猫を守ろう」と
ポストしていた。それに対する娘からの批判が「インセル」「差別主義者」である。

背景には、延々と続く文化戦争がある。都市部・民主党寄りの、フェミニズムやリベラリズムを支持する勢力と、
地方・共和党寄りの家父長制や宗教的伝統を支持する勢力の対立が存在しているが、争点は、次世代や共同体の再生産の問題だ。
個を重視し自由や解放を志向する流れは、共同体や家族の解体を伴う。婚姻率や出生率も低下傾向が続く。インセルたちは
「絶滅」という言葉で危機感を表明している。

(続く)