>>96 (続き)

 ――米国ではベトナム戦争の帰還兵の後遺症が社会問題化し、1980年にPTSD(心的外傷後ストレス障害)という診断名も
 誕生しました。

帰還兵の中には酒に溺れる者も多く、DV・虐待問題が起こりました。アルコール依存の親の元で育った人を指す
「アダルト・チルドレン」という言葉も生まれました。

戦争から帰った兵士が、家族にものすごい暴力を振るう。ベトナム戦争後の米国と同じことが、その30年前の日本でも
起きていたのです。

 ――ただ、戦後日本では長く社会問題化しませんでしたね。

私も含め、「戦争は終わったこと」と思い、その影響に目が向かなかったのでしょう。

米国ではPTSDの誕生と前後してDV・虐待を処罰する法律が各州に広がり、戦争トラウマと家庭内暴力がつながりました。
ところが、日本では家庭内暴力は「愛情」と読み替えられてきた。妻への暴力は「教育」。子への暴力は「しつけ」「体罰」と
正当化されました。「亭主関白」「ちゃぶ台返し」も、笑いと共に受容されました。

 ――3年前の著書で戦後トラウマとDV・虐待の関係を指摘しました。

日本のDVの源泉は戦争ではないかとすら、今は思っています。国が家族から男を奪って総動員し、ボロボロになった男たちを
家族の戻してケアをやらせる。その結果、家族がボロボロになってしまったのです。

こうした構図は虐待の「連鎖」にも見えますが、連鎖という荒っぽい言葉には注意が必要です。「元兵士は加害者だが、
被害者でもあり可哀想だ」という言説につながりかねません。それでは殴られ続けた妻や子が置き去りにされてしまいます」

(続く)