12月1日(月)朝日新聞東京版夕刊1面   論説委員会室から 時をよむ

「女子選手」とは 問われる智恵   西山良太郎

男性と女性の二つの性別のみ認め、変更はできない――米国で年頭に発せられた大統領令には
こう記された。多くの偏見を乗り越えて認められるようになった性の多様化に、
トランプ大統領が冷や水を浴びせる構図だが、今年のスポーツ界の動きも衝撃的だった。

発端は陸上競技だ。女子種目の出場資格を明確化するという理由で遺伝子検査を導入。
9月の世界選手権は全女子種目で検査した。同月にはボクシングも世界選手権で検査を採用。
10月には国際スキー・スノーボード連盟が追随し、2年後の検査導入を表明した。
出場資格を狭め、性別変更や性分化疾患といった選手の権利を奪いかねない。多様性の重視は
半歩後退したように映る。心理的な影響はスポーツ界を超えて広がる可能性もある。

本来トランプ氏の署名とは無関係のはずだが、任期中の3年後にロス五輪が控えるスポーツ界の
忖度を勘ぐりたくなる。

(続く)