>>562 (続き)

 ――スパイ対策は、外国人だけを取り締まるものではないのですね。

「ええ。たとえば戦前に日本にあった代表的なスパイ防止法は、明治期に作られた軍機保護法
でした。近づく日露間の戦争を前に、軍事機密の流出を防ぐ目的で制定されました」

「実際に戦争が始まると、軍機保護法により日本人スパイを摘発したとの発表が当局から行われ、
『外国に情報を売っている日本人がいる』との批判が生じました。新聞は『売国奴』と非難し、
国民からは厳罰化を求める声が噴出していきました」

 ――日露戦争かのそうした熱狂的なスパイ問題への関心は戦争終了後に実は低下していた、
 と指摘していますね。

「摘発の件数が減り、議会では軍機保護法を廃止しようという議論まで起きました。
息を吹き返したのは、次の戦争が始まったときです。37年に日中戦争が始まった直後、
軍機保護法は全面改正されました」

(続く)