5月15日(金)朝日新聞朝刊・天声人語

「怪物とたたかう者は、自らも怪物にならぬようにこころせよ」とは、ニーチェの警句である。
「怪物」の怖さを身をもって知る人に会いに行った。北海道旭川市に住む菱谷良一さん、
104歳。1941年9月の時は、師範学校の美術部員だった

治安維持法違反の容疑で逮捕された。日常の生活を描くことを「共産主義的だ」とみなされた。
「好きな絵を描いていただけなのに」。共産主義について何も知らず、特高の意に沿う供述が
できなかったために『資本論』を読まされたという

治安維持法の検挙対象は野放図に広がった。10万人以上が拘束されたとされる。理不尽な目に
遭った人たちに国からの謝罪や賠償はなかった

(続く)