8月15日

 平成19年の終戦の日、第1次安倍晋三内閣の閣僚16人のうち、靖国神社に参拝したのは高市早苗沖縄担当相(現首相)だけだった。この年7月の参院選で自民党は大敗し、政権は勢いを失っていた頃である。高市氏1人が気を吐いたのだった。

▼「たった一つのかけがえのない命をささげられた方々に対する感謝と、御霊(みたま)が安らかであるようにという祈りをささげた」。高市氏は参拝後、記者団にこう語った。もっとも高市氏も当初は、公務を理由に参拝を見送る考えを明らかにしていた。

▼それが急遽(きゅうきょ)、参拝することになったのは、事前に全閣僚の不参拝が報じられたことで、まずいと思った安倍首相が高市氏に参拝を要請したからだと当時、耳にした。政権基盤が弱体化し、内外に波風を立てたくなかった安倍首相としても、中国の圧力に完全に屈服したとの印象は与えたくなかったのだろう。

▼英霊の追悼と鎮魂という本来は諸外国の干渉を受ける筋合いのない行為が、かくも国際問題化したのはなぜか。高市氏は参拝に先立つ記者会見で嘆いた。「閣僚が靖国神社に行くことを外交問題にしてしまう勢力があることを残念に思う」。諸外国に告げ口して批判させようとする「ご注進メディア」である。

▼メディアだけではない。中江要介元中国大使は、昭和60年に中国の胡耀邦総書記と靖国問題を協議した際のエピソードを証言している。胡氏が「もう靖国神社の問題は両方とも言わないことにしよう」と述べたのに対し、中江氏は対日批判を促した。「もし今黙っちゃったら、日本では『ああ、もうあれでよかったんだ』と思ってしまう」。

▼外国勢力の力を借りてまで、慰霊の邪魔をしようという倒錯した心理は、克服すべきである。