9月5日

 中国が日本を批判する際に用いる常套(じょうとう)句「新型軍国主義」とは、一体何のことだろうか。かつて岸田文雄元首相が唱えた「新しい資本主義」と同じぐらいピンとこない。実体のない言葉を何かの拍子に思いつき、気に入ったので繰り返しているような据わりの悪さがある。

▼これが「軍国主義」ならば意味は分かる。政治、経済、教育など国家活動の全てを最優先で軍事力に振り向け、戦争とその準備を優先する国家体制や思想のことである。だが、専守防衛を掲げ徴兵制もなく非核三原則を順守し、憲法に自衛隊の存在すら明記できないわが国には当てはまらない。

▼「核兵器と戦略爆撃機を大量に保有している国が、そのいずれも持たない日本を『新型軍国主義』と呼ぶのはおかしい」。6月4日の小欄でもこの小泉進次郎防衛相の名ゼリフを取り上げたが、中国の主張は滑稽ですらある。ではなぜ中国は、その筋の悪いレッテル貼りをやめないのか。

▼一つには、日本が軍国主義化していると国際社会、特に米国に外交的に宣伝することで日本を孤立させるためだろう。中国は長年にわたって日本に反省と謝罪を求め、「敗戦国」という戦後の枠組みに閉じ込めて手足を縛ってきた。その間に地域の主導権をにぎろうとしている。

▼だが、中国は先の大戦のかわいそうな被害者で日本は野蛮な加害者という構図は、台湾や南シナ海、東シナ海で領土的野心を隠さない中国自身の傍若無人な振る舞いによって通用しなくなった。中国が非難する日本の防衛費増額や反撃能力の保持にしたところで、中国自身の脅威が招いた結果である。

▼中国が日本に悪役の烙印(らくいん)を押そうと図っても、もう米国もアジア諸国も信じない。まさに自業自得だろう。