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 社史にその刊行経緯が書かれていると教えてくれたのは、昨年10月に天寿を全うした
第一法規の田中英雄会長だ。私の入社時には社長だった田中氏は、
働きながら修士論文を3回それぞれ別のテーマで書いたが
才能がないと大学院から放り出された27歳の私を採用し、まもなく入社させてくれた。

 実家はなく、学費と生活費を全額稼いでいたバイト先は入社直後に営業停止となったので、
九死に一生を得た思いだった。第一法規に勤めながら博士課程に入るのを
後押ししてくれたのも田中氏である。彼がいなければ研究者として大学に職を得て、
こうして朝日新聞で連載を持つこともなかった。

 趣味人で交友関係の広い田中氏は様々な政治家と付き合いがあった。
2004年から蓮舫氏の後援会会長を務めた後、細野豪志氏の後援会会長となったが、
小坂憲次氏など自民党政治家らの選挙活動も支援した。

 出版社にとって政治家を支援して得られる利益はほぼない。
蓮舫氏といえば09年に始まった民主党政権の「事業仕分け」が有名だが、
その影響で多くの官公庁や独立行政法人が書籍代を削減し、第一法規の本も購読中止が
相次いだ。だが蓮舫氏を後援する田中氏は、デジタル化という大きな流れの中で
本よりデータベースが仕事で使われるようになったのだと達観していた。

 環境大臣在任中の細野氏が後援会会長就任を頼みに田中氏を訪ねてきたとき、
2人の昼食になぜか一介の編集者の私も同伴した。
田中氏は初対面の細野氏に対して、自分は旧社会党系の政治家とは合わないと熱弁した。
旧社会党系の議員もいる民主党に在籍していた細野氏にそう語る真意が当時は分からなかったが、
12年の自民党政権復活をへて17年に細野氏が民進党(民主党の後継政党)を離れたのを見て、
田中氏は二大政党制より安定保守政権をという民意の大きな流れを感じ取っていたのかと思った。

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