10月6日(火)朝日新聞朝刊・天声人語

『ジョニーは戦場へ行った』は強烈な反戦小説だ。1939年に出版された。主人公の米兵は、
愛国心をあおられて第1次世界大戦の戦場に赴く。彼は砲撃で負傷して、見ることも聞くことも
話すこともできなくなる。四肢も失う

病床で、彼は強く思う。〈命より大事な信条のために死ねとか言われたら、あなたは嘘つきですね
と言ってやれ。命より大事なものなんてない。気高い死なんてない〉(波多野理彩子訳)。
第2次大戦末期には、内容が問題視されて事実上の発禁になった

著者は、米国の脚本家ダルトン・トランボだ。米ソがともにファシズムと戦った時期に共産党に
入党した。だが「正義」は一瞬で切り替わる。冷戦でソ連は米国の敵になった。国内では
共産主義者を告発する「赤狩り」が広がり、これを批判する者にも嫌疑が掛けられた

(続く)