対局場は、いつもと変わらぬ牌を切る音だけが規則正しく空気を震わせる。

しかしその中で、仲林の目がじわりと赤く染まっていた。
指先がわずかに震え、打牌の瞬間に感情が零れそうになる。
必死に堪えながらも、視界が歪み、涙の膜が牌を滲ませる。

それに気づいた瑞原は、隣で小さく息をのんだ。
「……なんで泣いてんのよ」
突っつくような軽い言葉だったのに、声は既に掠れ、喉の奥で震えていた。
瑞原自身、唇を強く噛みしめても、瞳の奥から熱いものが溢れ出すのを止められない。
一筋の涙が、頬を伝って卓の上に落ちそうになる。

その光景を、真正面から見ていた優は、震える低い声で言った。
「……瑞原さん、ちゃんと切った牌は、並べてね……」
その言葉が終わらないうちに、優の目から大粒の涙が溢れ出した。
堪えようとした瞬間、堰を切ったように嗚咽が漏れ、肩が激しく震える。
静かな対局場に、優の嗚咽が響いた。

三人が涙を流す中、その一部始終を無言で見つめていた小林はゆっくりと目を細めた。
麻雀サイボーグと呼ばれた男は、感情を表に出すことがほとんどなかった。
しかし今、彼は静かに口を開いた。

「……馬鹿か、お前ら」

声は低く、淡々としていた。

「……ありがとな」

最後の言葉は、ほとんど呟きに近かった。
サイボーグと呼ばれた男の瞳の奥に、ほんのわずかだけいつも見せない熱が宿ったように見えた。
彼はそう言うと、再び牌に視線を戻した。
指先は相変わらず微塵の揺らぎもなく、次の最適打牌を繰り出していく。